現場通信 FILE 09
シェッド上に水路が通る珍事例、”湯出ノ沢スノーシェッド”

工務部 工事課

本田 健TAKESHI HONDA

道路防災の分野で様々な工事に携わってきた日本サミコン。山道で発生する土砂崩れや雪崩から道路を守る「シェッド」も、全国各地に納入・施工してきました。

シェッドとは、山道に取り付ける屋根のようなものです。傾斜を付けたコンクリート製の屋根を取り付けることで、道路に面した斜面から土砂や雪が落ちてきても、そこを通る車や道路を守れます。傾斜を付けるのは、屋根上に土砂や雪が残らないようにするためです。今回は全国的にも珍しい、シェッド上に水路のある「湯出ノ沢スノーシェッド」について、工務部工事課の本田さんに伺いました。

珍しい事例ではあるものの、工事自体はスムーズだった

――シェッドについては以前も伺いました(※)が、今回の施工は通常のものと比べて難しいものだったのでしょうか?
※3拠点合同で行われた太田川アースシェッドの施工。災害復旧が目的であり、スピードも求められる難しい現場だった。

シェッドの施工自体がそれなりに難しいものではありましたが、工事自体はそう難易度の高いものとは感じませんでした。というのも、今回は条件に恵まれていて、工事全体がスムーズに進んだのです。

――条件というと?

まず、現場ではセメントを使うのですが、セメントには水を混ぜますよね。その水温は5℃以上でないといけなくて、水温が低いときは施工を休むか、水を温めなければいけません。冬の終わりの時期でしたから水温のことは心配でしたが、水温5℃を下回ることもなく、スムーズに施工ができました。

――冬の施工だったのですね。写真を見る限り、とても天気が良かったので驚きました。

そうですね。天候にも恵まれて、ほとんど毎日晴れていましたよ。なので、施工自体は本当にスムーズでした。

工事中に流れてくる水をどこに逃がすかがポイント

――通常のシェッドとは、施工自体はそう変わらないのですね。

はい、設計やシェッドの製造は普段と少し違いますが、施工方法はそう変わりません。ただ、工事中にも施工箇所には水が流れてきますから、工事中に水を逃がすための一手間はありました。

――施工中に流れてくる水はどうしたのですか?

まず、道路の脇と下に水を通すための「臨時水路」を作りました。斜面から流れてきた水が道路の下を通り、反対側へと抜けていきます。シェッドの施工が終わってから臨時の水路を埋め、シェッドの上の水路に水を通しました。

シェッドから流れる水が、ちょっとした絶景をうみ出す

――それにしても、珍しい事例ですよね。今までも似たような事例はあったのでしょうか?

いえ、私は今回の施工が最も珍しい事例でしたね。水路があることで戸惑うことはありませんでしたが、こうして写真で見ると、貴重な経験ができたなと感じます。

――ちょっとした絶景ですよね。晴れの日に虹がかかりそう…。

そんな日もあるかもしれませんね(笑)。水路から流れてくる水がシェッドの内側に入らないよう、側面に透明のボードも取り付けているんですよ。

――あ、本当ですね。

これならシェッド内の明るさも確保できますし、ドライブ中にも流れ落ちる水を見ることができます。

編集後記

今回の現場は、数多くのシェッドに携わってきた日本サミコンから見ても珍しいものでした。今まで培ってきたノウハウを活かし、イレギュラーにもスムーズに対応できたことは、弊社にとっても貴重な経験でした。

文・現場通信編集部