現場通信 FILE 02
有害物質との闘い、富月右岸取付橋既設塗装撤去

補修事業部工事課長

高野 重則SHIGENORI TAKANO

有害物質を含む塗装を、剥離剤により撤去

新潟市南区に流れる中ノ口川。その国道460号沿いに架かる富月(ふげつ)右岸取付橋の耐荷力補強工事に伴い、既設塗装の撤去工事が行われました。既設塗装には有害物質であるPCB(ポリ塩化ビフェニル)が含まれており、撤去方法の選択肢は限られていました。

最終的に剥離剤での撤去作業となった富月右岸取付橋の塗装撤去。剥離剤による撤去に至るまでの過程と、有害物質に配慮しながらの作業の様子を、補修事業部の高野さんに伺います。

住宅地のただ中での作業方法を模索

富月右岸取付橋は近隣に住宅や食品工場があり、現場は住宅地のただ中です。騒音は迷惑になりますし、有害物質をわずかでも漏らせば甚大な影響が出ます。

――剥離剤以外にはどのような方法での撤去が考えられましたか?

ブラスト処理が考えられましたが、騒音や塗装屑の飛散の大きさから現実的ではありません。ブラスト処理は既設塗装に細かな粒子を噴射し、その摩擦で塗装をはがす方法です。簡単にいえば塗装を削ることになるので、有害物質を含んだ膨大な塗装屑が発生します。

剥離剤による撤去では、既設塗装に剥離剤を浸透させ、はがれやすくなった状態で作業を行います。既設塗装を少ない力で撤去できるため騒音も発生しませんし、有害物質を含む塗装屑が飛散しないよう、丁寧な作業が可能です。

――有害物質の撤去という特殊な作業環境で、どのような安全対策を取りましたか?

現場外部に有害物質が漏れないように密閉性を確保。また作業員はしっかりとした安全装備を装着し、身を守れるようにしました。

また、3重の養生と3台の負圧除塵装置で、有害物質と匂いが外部に漏れないようにしました。有害物質だけでなく匂いにも配慮し、周辺住民の方になるべく普段通りの環境を提供することで、工事への理解が得られます。

作業員同士で声を掛け合い、安全意識を保つ

高野さんは、どんなに厳重な安全対策をしたとしても、最終的には作業員一人ひとりの意識が一番大切だと言います。

――危険を伴う現場での施工だったと思いますが、どのようにして緊張感を保ちましたか?

基本的なことですが、作業員1人1人にきちんとした安全意識を持ってもらえるよう心がけました。作業員も人間である以上、危険な環境にも少しずつ慣れてしまいます。安全対策をいかに厳重にしても、作業員の意識が低ければ養生も安全装備も、最大限の効果を発揮できません。毎朝の朝礼だけでなく、作業員同士で声を掛け合い、現場全体で緊張感を高く保ちました。

編集後記

住宅地や街中での施工の場合、近隣住民の理解を得ることも大切な工程の1つと言えます。有害物質の撤去という危険を伴う今回の現場。高い水準での安全管理と近隣への配慮によって、トラブルなく完工できました。

文・現場通信編集部

工事概要

名称 一般国道460号 富月右岸取付橋耐荷力補強工事
場所 新潟県新潟市南区白根水道町 地先
発注 新潟市 西部地域土木事務所
担当支店 北陸支店
工期 平成29年(2017)3月15日~平成30年(2018)3月15日