PROJECT 02

長ノ木トンネルPCL-トンネルを再生する

PERSONAL DATA

吉澤 直輝 NAOKI YOSHIZAWA

工務部 工事課 | 2015年6月入社 | 土木科出身

広島県でトンネルの「クラック」「漏水」を解消

トンネル内面を保護する「PCL」

広島県呉市の長ノ木トンネルの歴史は古く、建設は第二次世界大戦中。戦車の保管場所として使用されていた隧道を、戦後に一般道路に転用。昭和30年代には道路を拡幅して使用されていましたが、経年劣化によるクラックや漏水が発生し、修復が決まりました。
問題は、何度かの拡大によりトンネルがいびつな複合円形になっていること。さらに、他に迂回路がなく長期に渡る通行止めが困難であり、トンネル上部には棚田のように住宅地が広がっている状況への対策も必要でした。そこで、短期施工を可能にする「PCL」工法により、2017年11月と2018年4月の2期に、各2週間で修復を行いました。
PCLとは、プレキャスト・コンクリート・ライニング。施工するトンネルの形状に合わせた円弧状のコンクリートパネルを工場内で製造し、トンネル内にあらかじめ構築した側壁の土台上に設置していく工法です。1985年の初納入以来、30年以上の実績と100件を超す施工例があります。
コンクリートパネルは厳密な品質管理の下で製造される工場製品であり、品質や耐久性に優れます。パネル自体が自立した構造体であり、現場では日本サミコンが独自開発した専用機で設置していくので、安全性や施工性に優れ、騒音や振動を最小限に抑え、工期短縮も可能。そのため、現場でコンクリートを打つ従来の方法と比べると、約30%のコストダウンも可能です。長ノ木トンネルが抱える様々な課題解決には最適な方法でした。

7時間×14日でコンクリートパネルを設置

まず、当社広島支店が測量と調査を行い、施工用設計図を作成。それに従って、工場ではトンネル形状に合わせたプレキャスト・コンクリートパネルを製造し、一方、トンネル内ではパネルを設置するための高さ1.2メートルの側壁を構築し、いよいよ架設工事へ。住宅地に近い生活道路上のトンネルで、近くに迂回路がないため、工事に使える時間は22時から翌朝5時まで。綿密なスケジュール管理が求められました。

パネルはトンネル横断方向で分割された円弧状の版。それをトンネル内に運び、専用機のスピンアームで持ち上げて設置し、天頂部と下部をそれぞれボルトで固定。つまり、左右2枚のパネルを天頂部で連結させて、トンネル内壁を覆っていくのです。スピンアームの他にも運搬トラック、フォークリフト、高所作業車を用い、施工していくので、手順や作業位置を守ることが安全かつ効率的な工事の基本。今回の現場は、予定作業終了後に機材や車両を退場させて、決められた時間に通行止めを解除しなければならなかったので、一層シビアでした。

PCL工法自体は工期の短さが特徴ですが、実際の施工では、計画に従い「予定通り」に行うことを徹底します。好調に進行したとしても、予定を越えて作業することはしません。パネル状の部材とはいえコンクリート製ですから、1枚が約3.5トンの重量物です。落下やずれはケガや時間超過を引き起こします。作業自体は協力会社の熟練の技術者が行うので、私たち社員は作業指揮者や現場管理者として、一つの作業に集中せずに現場全体を見て、安全とスケジュールを守る――入社3年目に経験したこの現場で、私は現場管理という仕事の本質を実感しました。

新技術、プレキャスト・インバート登場

2012年の笹子トンネル崩落事故以降、全国的にトンネルの点検や補修の動きが加速しています。その高まる需要に、当社はPCL工法で応え、補修・補強を短工期で行っています。現場でコンクリートを打つ方法や樹脂剤などを吹きつける一般的な補修方法に比べ、耐久性や安全性に優れ、工期短縮が可能なPCL工法は、今は、主に道路トンネルに施工していますが、水路トンネルの補修・補強、また、新設NATMトンネルの覆工にも対応できるため、貢献場面の増加が見込まれています。
また、トンネル底面部の変状や路盤隆起という問題に対して、2010年代にプレキャスト・コンクリート・インバートを開発。工場で製造したコンクリート部材でトンネル底部を逆アーチ形に多い、下部からの外圧を防ぐ工事です。新潟、兵庫、福島などの既設トンネルに施工しています。インバート単体施工でも安全確保が図れますが、上部のPCLと合わせると完全な環状での補強ができ、安全性が向上。この分野もまた、幅広い需要が期待できます。
これらPCL工法を始め、当社が関わる施工は、プレキャスト部材と専用機器を使っての短期間の現場が主体です。実は、入社前には長期の出張や砂埃にまみれての作業を予想していたのですが、実際に現場に出てみるとハイテク化が進んでいて驚いたくらいです。モノを作る仕事ですが、それだけでなく、社内や協力会社、職人、そして地域の人たちと関わることが多く、その地域の安全を守るのだとひしひしと感じています。これからも日本全国の現場で問題を解決していきたいと思います。

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